東京高等裁判所 昭和33年(う)50号 判決
被告人 高橋政一
〔抄 録〕
原判決には法律の適用として刑法第九五条とあるのみで、その第一項か第二項のいずれを適用するか明示されていないことは所論のとおりであるが、およそ判決における法令の適用とは、判示事実に対していかなる法令を適用したかを明らかにし、判決主文のよつて来る根拠を示すものであるから、判示事実と相まつて、主文がいかなる法令にもとづいて導き出されたかを知り得る程度に法令を引用すれば足りると解すべきである。(東京高等裁判所昭和三一年三月二六日判決参照)、本件についてこれをみるに、原判示第二の事実は、巡査早川忠雄の職務執行に当つて、同人に対して暴行を加えた旨(公務執行妨害)を判示したものであつて、同公務員をしてある処分をなさしめ、若しくはなさざらしめるため、又はその職を辞せしめるため暴行又は脅迫を加えた旨(職務強要)を判示したものでないことは一読して明らかであり、従つて、原判決がこれに対する適条として刑法第九五条を示したのは、同条第一項を適用する趣旨であることは、判示事実と対照すれば明らかであつて、同条第一項を適用する旨明示しなかつたとしても、原判決に理由不備または法令の適用を誤つた違法の存するものではない。
(尾後貫 堀真 山岸)